おとなの発達特性

大人の自閉スペクトラム症(ASD)

人と話したあとにどっと疲れる、「空気が読めない」と言われる、急な予定の変更が苦手、音や光が気になって集中できない——。周りに合わせようと頑張り続けて、気づけば心も体も疲れ切っていた、という方もいます。その背景に、自閉スペクトラム症(ASD)の特性があることがあります。

こんなサインはありませんか

  • 雑談や、相手の気持ちを察することが苦手で、人づきあいに疲れやすい
  • 冗談や遠回しな言い方を、言葉どおりに受け取ってしまう
  • 急な予定の変更や、いつもと違う手順に強い不安を感じる
  • 興味のあることには深く集中するが、切り替えが難しい
  • 音・光・におい・肌ざわりなどに、人より敏感(または鈍感)
  • 周りに合わせようと無理を続け、強い疲れや気分の落ち込みがある

当てはまる数で診断が決まるわけではありません。つらさが続いて、暮らしや仕事に差しさわりが出ているときは、早めにご相談ください。

自閉スペクトラム症(ASD)とは

自閉スペクトラム症(ASD)は、生まれつきの脳の働き方の特性によって、「人との関わりやコミュニケーションの取り方」と「こだわりや感覚の感じ方」に特徴がみられる状態です。以前は「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などと呼ばれていたものも、現在の診断基準(DSM-5-TR)ではまとめて自閉スペクトラム症と呼ばれます。

「スペクトラム(連続体)」という言葉のとおり、特性の現れ方や強さは人によって大きく異なり、はっきりした境目があるわけではありません。特性があっても、環境が合っていれば大きな困りごとにならないこともあります。

主な特性

人との関わり・コミュニケーション

  • 言葉の裏にある意図や、表情・しぐさから気持ちを読み取ることが苦手
  • 雑談や、目的のない会話が負担に感じる
  • 自分の考えを、相手に合わせて伝えるのが難しいことがある
  • 相手との距離のとり方がわかりにくい

こだわり・感覚の特性

  • 決まった手順や習慣を大切にし、予定外のことに強いストレスを感じる
  • 特定の分野に強い興味を持ち、深く掘り下げる
  • 音・光・におい・味・肌ざわりなどへの感じ方が、人と大きく違う(とても敏感、または鈍感)

これらの特性は、短所ばかりではありません。決まったことを正確にこなす、興味のある分野で高い集中力を発揮するなど、強みとして生かせる場面もあります。

大人になって困りやすいこと

子どものころは、周りのサポートや決まった環境の中で目立たなかった特性が、就職や結婚などで求められることが増えたときに、困りごととして表に出てくることがあります。

  • 職場の暗黙のルールや、あいまいな指示に戸惑う
  • 雑談や会議など、人と関わる場面で消耗しやすい
  • 周りに合わせるために特性を隠し続け(カモフラージュ)、強い疲れがたまる
  • その結果、うつ病・不安症・不眠・適応障害などの二次的な不調が起こる

実際には、気分の落ち込みや不眠、職場の不適応をきっかけに受診し、診察の中でASDの特性に気づくことも少なくありません。

診断について

ASDの診断は、ひとつの検査だけで決まるものではありません。診察で次のような点を詳しく伺い、総合的に判断します。

  • いま、仕事・家庭・人間関係でどのような困りごとがあるか
  • 子どものころの様子(友だちとの関わり方、遊び方、こだわり、感覚の過敏さなど)
  • ADHD・うつ病・不安症など、似た症状や重なりやすい状態がないか

子どものころの様子を知るために、通知表や母子手帳、ご家族からのお話が参考になることがあります。必要に応じて質問紙や心理検査を用いることがあり、当院で行えない検査については、実施できる医療機関をご紹介します。

診断を受けるかどうかは、ご本人が決めることです。「診断名がほしい」というより「困りごとを減らしたい」という方も、まずはご相談ください。

支援と治療について

ASDの特性そのものを、薬で治す治療はありません。支援の中心は、特性を理解し、自分に合った環境や方法を見つけていくことです。

特性の理解と、環境の工夫

  • 自分が疲れやすい場面・苦手な刺激を知り、休む時間をあらかじめ確保する
  • 予定はできるだけ前もって確認し、変更があるときは早めに知らせてもらう
  • 耳栓・イヤーマフ・サングラスなどで、感覚の負担を減らす
  • あいまいな指示は、具体的に確認する習慣をつける

精神療法・心理的な支援

診察では、困りごとが起きた場面を一緒に振り返り、どうすれば負担を減らせるかを具体的に考えます。人づきあいのコツを練習するプログラムなどが役立つこともあります。

二次的な不調への治療

不眠・不安・気分の落ち込み・イライラなど、ASDに重なって起こる症状がある場合は、それぞれに合わせて薬物療法を含む治療を行います。

特性を強みとして生かす

ASDの特性は、環境や役割によっては強みとして生かせることがあります。苦手なことを減らすだけでなく、得意なことに目を向けることも、自分らしく暮らすための大切な視点です。

  • 正確さ・ていねいさ:決まった手順を守り、ミスなく作業を進めることが得意な方は多くいます。
  • 集中力・探究心:興味のある分野では、深い知識を身につけ、長い時間集中して取り組むことができます。
  • 率直さ・公平さ:思ったことをまっすぐ伝えられることや、ルールを大切にする姿勢は、信頼につながることもあります。

どんな作業なら力を出しやすいか、どんな環境なら疲れにくいかを、これまでの経験から一緒に振り返ることで、働き方や暮らし方のヒントが見つかることがあります。疲れをためないために、ひとりで過ごす時間や、好きなことに没頭する時間を意識して確保することもおすすめです。

職場や家庭での配慮

  • 指示は「いつまでに・何を・どのくらい」と具体的に、できれば文字で伝えてもらう
  • 急な変更はなるべく減らし、変わるときは理由とともに早めに伝えてもらう
  • 音や人の出入りが少ない席、休憩できる場所を用意してもらう

職場に特性を伝えるかどうか、どのように伝えるかは、ご本人の考えを大切にしながら一緒に考えます。精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療、発達障害者支援センター、就労支援の機関など、利用できる制度や相談先もあります。

ご家族・周りの方へ

  • わざとではないことを知る:言い方がそっけない、気持ちを察してくれないと感じる場面も、特性による受け取り方の違いであることがあります。
  • 伝え方を具体的に:「ちゃんとして」ではなく、「○時までに、これをしてほしい」と具体的に伝えると、行き違いが減りやすくなります。
  • 一人で抱え込まない:ご家族が戸惑いや疲れを感じることもあります。ご家族だけでのご相談も承ります。

よくあるご質問

これまでの生きづらさの理由がわかり、自分を責めることが減ったり、自分に合った環境や働き方を考えやすくなったりする方もいます。一方で、診断を受けるかどうかはご本人が決めることですので、まずは困りごとをご相談ください。

ASDの特性そのものを薬で治す治療はありません。特性への理解と環境の工夫が支援の中心になります。ただし、重なって起こる不眠・不安・気分の落ち込みなどには、薬物療法を含む治療を行うことがあります。

以前「アスペルガー症候群」と呼ばれていた状態は、現在の診断基準では自閉スペクトラム症(ASD)にまとめられています。

ASDとADHDの特性をあわせ持つ方は少なくありません。どちらの特性がどのように困りごとに影響しているかを、診察で一緒に整理していきます。

うまく話せなくても大丈夫です。伝えたいことをメモにまとめてお持ちいただくのもおすすめです。ゆっくりお話を伺います。

当院では16歳以上の方を診療しています(16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています)。15歳以下の方は、児童・思春期を専門とする医療機関をおすすめしています。

あかつきメンタルクリニックでの診療

当院は、名古屋市中区丸の内(地下鉄「丸の内」駅から徒歩4分、「伏見」駅から徒歩7分)にある精神科・心療内科のクリニックです。診療時間は平日 10:00〜18:00、土日祝 9:00〜17:00(どちらもお昼休みあり)です。診療日は Web予約の空き状況でご確認ください。

  • 初めての方は、Web予約・公式LINE・お電話(050-3529-9731)でご予約ください。
  • 初診では、いまお困りのこと、これまでの経過、生活や体の状態などを伺い、今後の進め方を一緒に考えます。
  • 16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています。15歳以下の方の診療は行っていません。
  • 入院や専門的な治療が望ましいと考えられる場合は、適した医療機関をご紹介します。

受診の前に、受診にあたって(持ち物・当院で診療をお受けできない場合)をご確認ください。

Web予約 公式LINEのご案内 お電話 050-3529-9731

参考にした資料

  • 米国精神医学会『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』
  • 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」発達障害
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(ASD・自閉スペクトラム症)
  • 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター

このページは、こころの病気についての一般的な情報です。診断や治療の方針は、診察でお話を伺ったうえで一人ひとりに合わせて決めます。気になる症状があるときは、自己判断せずにご相談ください。

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