おとなの発達特性

大人のADHD(注意欠如多動症)

忘れ物やうっかりミスが多い、締め切りや約束をつい守れない、気が散って仕事が進まない——。努力しても同じつまずきをくり返してしまうとき、その背景にADHD(注意欠如多動症)の特性があることがあります。特性を知ることは、自分を責めるのをやめ、暮らしやすくする工夫を見つける第一歩です。

こんなサインはありませんか

  • 忘れ物・なくし物が多く、大事な約束を忘れてしまう
  • ケアレスミスが多い、書類の細かいところを見落とす
  • 締め切りに間に合わない、物事を後回しにしてしまう
  • 片づけや整理整頓が苦手で、部屋や机が散らかりがち
  • 会議中にじっとしていられない、人の話をさえぎってしまう
  • 思いつきで衝動買いや発言をして、あとで後悔する
  • 子どものころにも、忘れ物や落ち着きのなさを注意されることが多かった

当てはまる数で診断が決まるわけではありません。つらさが続いて、暮らしや仕事に差しさわりが出ているときは、早めにご相談ください。

ADHDとは

ADHD(注意欠如多動症)は、生まれつきの脳の働き方の特性によって、「不注意」や「多動性・衝動性」が目立ち、日常生活や仕事に影響が出る状態です。発達障害(神経発達症)のひとつに数えられますが、能力や人柄の問題ではありません。

子どものころに気づかれることが多い一方で、学生時代は周りの支えや本人の努力で乗り切り、仕事や家庭で求められることが増えた大人になってから、困りごととして表に出てくることも少なくありません。国際的な診断基準(DSM-5-TR)では、大人のおよそ2.5%にみられるとされています。

大人のADHDの主な特性

不注意

  • 集中が続かない、気が散りやすい
  • ケアレスミスや見落としが多い
  • 忘れ物・なくし物が多い、約束や予定を忘れる
  • 段取りを組むのが苦手で、複数の作業を並行して進められない

多動性・衝動性

  • そわそわして、長い時間じっと座っていられない
  • しゃべりすぎる、相手の話が終わる前に話し始めてしまう
  • 順番を待つのが苦手
  • よく考えずに行動したり、大きな買い物や決断をしてしまったりする

大人では、子どものころのような目立った「多動」は少なくなり、「頭の中が落ち着かない」「いつも何かに追われている感じ」として感じられることもあります。特性の出方は人によってさまざまで、不注意が中心の人もいれば、衝動性が目立つ人もいます。

大人になって困りやすいこと

ADHDの特性そのものに加えて、うまくいかない経験をくり返すことで、二次的な不調が起こることがあります。

  • 仕事でのミスや遅れが続き、評価が下がる、職場を転々とする
  • 家事やお金の管理がうまくいかず、家族との衝突が増える
  • 「自分はだめだ」と自信をなくし、気分の落ち込み(うつ病)や不安が強くなる
  • 眠る時間が不規則になる、寝つけないなど、睡眠のリズムが乱れる

実際には、うつ病や不安、不眠をきっかけに受診し、診察の中でADHDの特性に気づくことも多くあります。

診断について

ADHDの診断は、ひとつの検査だけで決まるものではありません。診察で次のような点を詳しく伺い、総合的に判断します。

  • いま、仕事・家庭・人間関係でどのような困りごとがあるか
  • 子どものころ(12歳になる前)から、不注意や落ち着きのなさなどの特性があったか
  • 特性が、職場と家庭など、2つ以上の場面でみられるか
  • うつ病・不安症・双極症・睡眠の病気など、似た症状が出るほかの状態がないか

子どものころの様子を知るために、通知表や母子手帳、ご家族からのお話が参考になることがあります。可能であればお持ちください。必要に応じて質問紙や心理検査を用いることがあり、当院で行えない検査については、実施できる医療機関をご紹介します。

治療と、暮らしやすくする工夫

ADHDの治療の目的は、特性を「なくす」ことではなく、困りごとを減らし、本人が力を発揮しやすい状態をつくることです。

特性を知り、環境と方法を工夫する

  • 予定やタスクは、頭で覚えずにスマートフォンのリマインダーやメモに「外に出す」
  • 大きな仕事は小さな手順に分け、ひとつずつ片づける
  • 鍵や財布など、なくしやすい物の置き場所を一か所に決める
  • 集中しやすい時間帯や場所を見つけ、気が散るものを遠ざける

精神療法・心理的な支援

診察では、困りごとの起こりやすい場面を一緒に振り返り、具体的な対策を考えます。考え方と行動のパターンを整える認知行動療法的な関わりが役立つこともあります。

薬物療法

特性による困りごとが大きい場合は、薬物療法を検討します。ADHDの治療薬には、中枢神経刺激薬と非中枢神経刺激薬があり、効果や副作用を確かめながら使います。一部の薬は、決められた登録を受けた医師・薬局でなければ処方・調剤できない決まりがあります。薬が合うかどうかは人によって異なるため、メリットと注意点をお伝えしたうえで、一緒に相談して決めます。

ほかの状態との見分けと重なり

集中しにくい、ミスが多い、落ち着かないといった状態は、ADHD以外の原因でも起こります。そのため、診察では次のような状態がないかも確かめます。

  • うつ病・不安症:気分の落ち込みや強い不安があると、集中力や判断力が落ち、ADHDのように見えることがあります。
  • 双極症:気分が高ぶる時期には、落ち着きのなさや衝動的な行動が目立つことがあります。
  • 睡眠の問題:睡眠不足や睡眠の病気があると、日中の注意力が大きく下がります。
  • ASD(自閉スペクトラム症):ADHDとあわせ持つことがよくあり、困りごとの背景を整理するうえで大切です。

反対に、ADHDの特性があることで、うつ病や不安、依存の問題などが起こりやすくなることも知られています。いくつかの状態が重なっているときは、困りごとの大きいところから順に、治療や工夫を考えていきます。

職場や家庭での配慮

周りの理解と、ちょっとした環境の調整で、働きやすさが大きく変わることがあります。

  • 指示は口頭だけでなく、メールやメモなど文字で残してもらう
  • 締め切りを細かく区切り、途中で進み具合を確認してもらう
  • 電話や話し声の少ない、集中しやすい席にしてもらう

職場に特性を伝えるかどうか、どのように伝えるかは、ご本人の考えを大切にしながら一緒に考えます。障害者手帳や就労支援などの制度を利用できる場合もあります。

ご家族・周りの方へ

  • 「やる気がない」と決めつけない:本人は努力していても、特性のために同じ失敗をくり返してしまうことがあります。叱るより、仕組みで助ける方法を一緒に考えるほうがうまくいきやすいです。
  • できたことに目を向ける:失敗を責められ続けると、自信を失い、気分の落ち込みにつながることがあります。
  • ご家族も相談を:家事の分担やお金の管理など、家庭での困りごとについても、ご家族だけでのご相談を承ります。

よくあるご質問

ADHDは生まれつきの特性で、大人になってから新しく始まるものではないと考えられています。ただし、子どものころは目立たず、大人になって仕事や家庭での役割が増えたときに、初めて困りごととして気づかれることはよくあります。

ADHDの診断は、ひとつの検査の結果だけで決まるものではありません。現在の困りごとや子どものころの様子を詳しく伺い、必要に応じて質問紙や心理検査を参考にしながら、総合的に判断します。

薬は、集中しにくさや衝動性をやわらげる助けになることがありますが、特性そのものをなくすものではありません。生活の工夫や環境の調整と組み合わせることが大切です。

はい、受診できます。通知表などがなくても、ご本人の記憶やご家族からのお話をもとに、子どものころの様子を伺います。

はい、両方の特性をあわせ持つ方は少なくありません。どちらの特性が困りごとに影響しているかを整理することで、より合った対策を考えやすくなります。

当院では16歳以上の方を診療しています(16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています)。15歳以下の方は、児童・思春期を専門とする医療機関をおすすめしています。

あかつきメンタルクリニックでの診療

当院は、名古屋市中区丸の内(地下鉄「丸の内」駅から徒歩4分、「伏見」駅から徒歩7分)にある精神科・心療内科のクリニックです。診療時間は平日 10:00〜18:00、土日祝 9:00〜17:00(どちらもお昼休みあり)です。診療日は Web予約の空き状況でご確認ください。

  • 初めての方は、Web予約・公式LINE・お電話(050-3529-9731)でご予約ください。
  • 初診では、いまお困りのこと、これまでの経過、生活や体の状態などを伺い、今後の進め方を一緒に考えます。
  • 16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています。15歳以下の方の診療は行っていません。
  • 入院や専門的な治療が望ましいと考えられる場合は、適した医療機関をご紹介します。

受診の前に、受診にあたって(持ち物・当院で診療をお受けできない場合)をご確認ください。

Web予約 公式LINEのご案内 お電話 050-3529-9731

参考にした資料

  • 米国精神医学会『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』
  • 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」発達障害
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(ADHD・注意欠如多動症)
  • 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター

このページは、こころの病気についての一般的な情報です。診断や治療の方針は、診察でお話を伺ったうえで一人ひとりに合わせて決めます。気になる症状があるときは、自己判断せずにご相談ください。

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