気分が沈む、何をしても楽しめない、朝起きるのがつらい——。そんな状態がほぼ毎日、2週間以上続いているなら、うつ病が隠れているかもしれません。うつ病は「気の持ちよう」や「怠け」ではなく、脳と心のエネルギーが落ちてしまった状態で、適切な休養と治療で回復をめざせる病気です。
こんなサインはありませんか
- 気分が沈んだ状態が、ほぼ一日中・ほぼ毎日続いている
- 好きだったことや趣味を楽しめない、興味がわかない
- 寝つけない・夜中や早朝に目が覚める、または眠りすぎる
- 食欲が落ちた(または増えた)、体重が大きく変わった
- 疲れやすく、体が重い。朝が特につらい
- 集中できない、決められない、仕事や家事の能率が落ちた
- 自分を責める気持ちや、「消えてしまいたい」と思うことがある
当てはまる数で診断が決まるわけではありません。つらさが続いて、暮らしや仕事に差しさわりが出ているときは、早めにご相談ください。
うつ病とは
うつ病は、強い気分の落ち込みや、物事への興味・喜びがなくなる状態が続き、眠り・食欲・意欲・集中力など、心と体のさまざまな働きに影響が出る病気です。誰にでも気分が落ち込む日はありますが、うつ病では、その状態が長く続き、自分の力だけでは元に戻りにくくなります。
日本では、およそ100人に6人が一生のうちに一度はうつ病を経験するといわれ、決してめずらしい病気ではありません。年齢や性別を問わず起こりますが、女性は男性よりかかりやすいことが知られています。
主な症状
こころの症状
- 憂うつな気分、悲しい気持ち、むなしさが続く
- これまで楽しめていたことに興味がわかない、喜びを感じない
- 集中できない、考えがまとまらない、物事を決められない
- 自分には価値がないと感じる、必要以上に自分を責める
- イライラする、焦りを感じて落ち着かない
- 「いなくなりたい」「死んでしまいたい」と考える
からだの症状
- 眠れない(寝つけない・途中で目が覚める・早く目が覚める)、または眠りすぎる
- 食欲がない、または食べすぎる。体重の変化
- 疲れやすい、だるい、体が重い
- 頭痛・肩こり・胃の不調など、検査では原因がはっきりしない体の不調
朝がいちばんつらく、夕方にかけて少し楽になる「日内変動」がみられることもあります。体の症状が先に目立ち、内科を受診して初めて気づかれることも少なくありません。
原因・きっかけ
うつ病は、ひとつの原因だけで起こるのではなく、いくつかの要因が重なって起こると考えられています。
- 環境やできごと:仕事や家庭での負担、人間関係、異動・転居・出産・退職などの大きな変化、大切な人との別れなど。昇進や結婚のような「うれしい変化」がきっかけになることもあります。
- 体の状態:長引く体の病気、ホルモンの変化、睡眠不足や過労など。
- その人の傾向:まじめで責任感が強い、完璧を求めやすい、周りに気をつかいすぎる、といった傾向が影響することもあります。
はっきりしたきっかけがなくても発症することがあります。「原因が思い当たらないから、うつ病ではない」とは限りません。
診断について
診断は、問診で症状の内容・続いている期間・暮らしへの影響などを詳しく伺って行います。国際的な診断基準(DSM-5-TR など)では、「抑うつ気分」または「興味・喜びの喪失」を含むいくつかの症状が、ほぼ毎日、2週間以上続いていることが目安になります。
似た症状は、ほかの病気でも起こります。気分が高ぶる時期がある「双極症(躁うつ病)」は、治療の方法が異なるため、これまでの気分の波について伺います。また、甲状腺の病気などの体の病気や、服用中の薬の影響で気分が落ち込むこともあるため、必要に応じて血液検査や内科の受診をおすすめすることがあります。
治療について
うつ病の治療は、休養・精神療法・薬物療法を、症状の重さや生活の状況に合わせて組み合わせて進めます。
休養と環境の調整
エネルギーが落ちた状態で無理を続けると、回復が遅れがちです。仕事や家事の量を減らす、思い切って休むなど、心と体を休ませることが治療の土台になります。必要なときは、休職のための診断書の作成や、職場との調整についてもご相談いただけます。
精神療法(カウンセリング的な関わり)
診察では、つらさの背景にある考え方のくせや、ストレスとの付き合い方を一緒に見直していきます。考え方と行動のパターンを整える「認知行動療法」は、うつ病に効果が確かめられている精神療法のひとつです。
薬物療法
中等症以上のうつ病では、抗うつ薬(SSRI・SNRI など)を使うことが診療ガイドラインでもすすめられています。抗うつ薬は、飲み始めてから効果が出るまでに2〜4週間ほどかかることが多く、飲み始めに吐き気や眠気などの副作用が出ることもあります。気になることは遠慮なくご相談ください。
症状が良くなってからも、再発を防ぐため、しばらくの間(目安として半年前後)は治療を続けることがすすめられています。自己判断で急にやめると、体調をくずすことがあるため、減らすときは医師と相談しながら少しずつ進めます。
回復までの道のり
うつ病の回復は、まっすぐ右肩上がりではなく、良い日と悪い日をくり返しながら、少しずつ上向いていくのがふつうです。調子の悪い日があっても「振り出しに戻った」と考えすぎないことが大切です。
- 休養の時期:まずは休むことを優先します。大きな決断(退職・離婚・引っ越しなど)は、できるだけ回復してからにしましょう。
- 回復の時期:少しずつ活動を増やし、生活リズムを整えます。
- 再発予防の時期:元の生活に戻りながら、無理のない働き方やストレスへの対処法を身につけます。
ご家族・周りの方へ
- 励ましすぎない:「がんばれ」「気の持ちよう」という言葉は、本人を追い込んでしまうことがあります。「つらいね」「ゆっくり休んで」と、気持ちを受け止める声かけが助けになります。
- 休むことを後押しする:本人は「休んではいけない」と自分を責めがちです。休養が治療の一部であることを、一緒に理解してください。
- 受診をすすめる:本人が受診をためらうときは、「眠れていないみたいだから一度相談してみよう」など、体の不調を入り口にすると話しやすいことがあります。ご家族だけでのご相談も承ります。
- ご家族自身も休む:支える側が疲れ切ってしまわないよう、ご自身の時間も大切にしてください。
「死にたい」という言葉が出たときは、話をそらさずに受け止め、ひとりにしないでください。命の危険が差し迫っているときは、ためらわず119番へ連絡してください。
よくあるご質問
誰にでも気分が落ち込む時期はありますが、うつ病では、落ち込みや興味の喪失がほぼ毎日・2週間以上続き、眠り・食欲・集中力などにも影響が出て、仕事や家事に差しさわりが出ます。「いつもの自分と違う」状態が続いているときは、早めにご相談ください。
抗うつ薬に、いわゆる依存性(やめられなくなる性質)はほとんどないとされています。ただし、急にやめると、めまいや不快感などが出ることがあるため、症状が落ち着いてから、医師と相談しながら少しずつ減らしていきます。
症状が軽い場合は、休養や環境の調整、精神療法を中心に進めることもあります。症状の重さやご希望を伺ったうえで、一緒に治療の方針を決めますので、薬について不安がある方もご相談ください。
症状の重さや仕事の内容によって異なります。休まずに業務量を調整する方法もあれば、しっかり休んだほうが回復が早い場合もあります。必要に応じて、休職のための診断書の作成や、復職に向けたご相談にも対応しています。
回復のペースは人によって大きく異なります。治療を始めて数週間から数か月で少しずつ楽になることが多いですが、再発を防ぐために、良くなってからもしばらく治療を続けることが大切です。
はい、ご家族だけでのご相談も承ります。本人が受診をためらっている場合の声のかけ方や、家での接し方などについてお話しできます。
あかつきメンタルクリニックでの診療
当院は、名古屋市中区丸の内(地下鉄「丸の内」駅から徒歩4分、「伏見」駅から徒歩7分)にある精神科・心療内科のクリニックです。診療時間は平日 10:00〜18:00、土日祝 9:00〜17:00(どちらもお昼休みあり)です。診療日は Web予約の空き状況でご確認ください。
- 初めての方は、Web予約・公式LINE・お電話(050-3529-9731)でご予約ください。
- 初診では、いまお困りのこと、これまでの経過、生活や体の状態などを伺い、今後の進め方を一緒に考えます。
- 16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています。15歳以下の方の診療は行っていません。
- 入院や専門的な治療が望ましいと考えられる場合は、適した医療機関をご紹介します。
受診の前に、受診にあたって(持ち物・当院で診療をお受けできない場合)をご確認ください。
参考にした資料
- 日本うつ病学会 治療ガイドライン「うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害」
- 米国精神医学会『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』
- 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」うつ病
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「うつ病」
このページは、こころの病気についての一般的な情報です。診断や治療の方針は、診察でお話を伺ったうえで一人ひとりに合わせて決めます。気になる症状があるときは、自己判断せずにご相談ください。