鍵をかけたか何度も確かめずにいられない、汚れが気になって手を洗い続けてしまう——。「やりすぎだ」と自分でも分かっているのに、不安が強くてやめられない。そうした考えや行動に多くの時間をとられ、暮らしや仕事に影響が出ているなら、強迫症という病気かもしれません。治療で、強迫に振り回されにくくなることをめざせます。
こんなサインはありませんか
- 鍵・ガス・電気などを何度も確認しないと気がすまない
- 汚れやばい菌が気になり、手洗いや入浴に長い時間がかかる
- 「誰かを傷つけてしまうのでは」などの考えが、意に反して浮かんでくる
- 物の並びや手順が決まった通りでないと、強い不安になる
- ばかばかしいと分かっていても、やめられない
- 確認や手洗いのために、1日に何時間もとられている
- 家族に何度も「大丈夫?」と確かめてしまう
当てはまる数で診断が決まるわけではありません。つらさが続いて、暮らしや仕事に差しさわりが出ているときは、早めにご相談ください。
強迫症とは
強迫症(強迫性障害)は、本人の意思に反して不快な考えやイメージが何度も浮かび(強迫観念)、その不安を打ち消すために、同じ行動や頭の中の作業をくり返さずにいられなくなる(強迫行為)病気です。
多くの場合、本人も「やりすぎだ」「不合理だ」と感じていますが、やめようとすると強い不安が押し寄せるため、行為をくり返してしまいます。強迫に多くの時間がとられたり、強い苦痛があったりして、仕事や家事、人間関係に影響が出ます。10代から20代ごろに始まることが多い病気です。
主な症状
よくみられる強迫観念と強迫行為
| 強迫観念(浮かんでくる考え) | 強迫行為(打ち消すための行動) |
| 汚れた、ばい菌がついた | 何度も手を洗う、長時間の入浴、消毒をくり返す |
| 鍵をかけ忘れた、火を消し忘れた | 何度も戻って確かめる、写真を撮って確認する |
| 人を傷つけてしまうのでは | 危ないものを避ける、人に何度も確かめる |
| きちんと並んでいないと落ち着かない | 並べ直す、決まった手順や回数をくり返す |
| 縁起の悪い考えが浮かんだ | 頭の中で特定の言葉や数を唱えて打ち消す |
家族を巻き込んで、確認を手伝ってもらったり、「大丈夫」と何度も言ってもらったりすることもあります。強迫を引き起こす場面を避けるために、外出や家事ができなくなることもあります。
原因・なりやすさ
強迫症のはっきりした原因はまだ分かっていませんが、脳の働き方の特徴や、生まれもった気質、ストレスなど、いくつかの要因が関係していると考えられています。
強迫症が続く仕組みとして、「不安になる → 確認や手洗いをする → 一時的にほっとする」という流れがくり返されることで、かえって不安と行為が強まっていく悪循環が知られています。治療では、この悪循環を断ち切ることをめざします。
本人の性格が弱いから、育て方が悪かったから、という病気ではありません。
診断について
診断は、問診で強迫観念と強迫行為の内容、かかっている時間、暮らしへの影響などを伺い、国際的な診断基準(DSM-5-TR など)に沿って判断します。
強迫症は、うつ病や不安症、チック症などと一緒に起こることがあります。また、似た症状がほかの病気の一部として現れることもあるため、全体の状態を確かめながら進めます。強迫の内容を話すことに恥ずかしさを感じる方も多いですが、診察ではめずらしいことではありませんので、安心してお話しください。
治療について
強迫症の治療は、認知行動療法(曝露反応妨害法)と薬物療法が中心です。
曝露反応妨害法(認知行動療法)
曝露反応妨害法は、強迫症に効果が確かめられている認知行動療法の方法です。不安を引き起こす場面にあえて少しずつ向き合い(曝露)、確認や手洗いなどの行為をしないで過ごす(反応妨害)練習をします。行為をしなくても不安は時間とともに下がっていくことを体験し、強迫の悪循環を弱めていきます。取り組みやすい課題から、段階を追って進めます。厚生労働省も、強迫症の認知行動療法のマニュアルを公開しています。
薬物療法
抗うつ薬の一部(SSRI など)が、強迫症の症状をやわらげる目的で使われます。効果がはっきりするまでに時間がかかることが多く、うつ病のときより多めの量が必要になることもあります。症状や副作用を見ながら、医師と相談して調整します。
症状によっては、専門的な認知行動療法を行っている医療機関と連携したり、ご紹介したりすることがあります。
受診の目安
- 確認や手洗いなどに、1日のうちかなりの時間がとられている
- 強迫のために、遅刻が増えた、外出や家事ができなくなった
- 家族に確認を頼むことが増え、家族も疲れてきている
- 気分の落ち込みや眠れない日が続いている
強迫症は、何年も相談できずにいる方が多い病気です。「こんなことで」と思わずにご相談ください。
ご家族・周りの方へ
- 責めない・笑わない:本人もやめたいのにやめられずに苦しんでいます。「気にしすぎ」「いいかげんにして」という言葉は、本人を追い込むことがあります。
- 確認に付き合いすぎない:何度も「大丈夫」と答えたり、代わりに確認したりすることは、その場は落ち着いても、強迫を長引かせることがあります。どう応じるかは、治療の中で一緒に決めていくのがおすすめです。
- 小さな変化を認める:行為の回数や時間が少しでも減ったときは、そのがんばりを認めてください。
- ご家族自身も休む:巻き込まれて疲れているときは、ご家族だけでのご相談もご利用ください。
よくあるご質問
きれい好きや几帳面さは、本人が困っていなければ問題ありません。強迫症では、不安を打ち消すための行為がやめられず、多くの時間がとられたり強い苦痛があったりして、暮らしに差しさわりが出ている点が違います。
「人を傷つけてしまうのでは」などの考えは、強迫観念としてよくみられるもので、その考えを実行したいわけではないことがほとんどです。診察ではめずらしい内容ではありませんので、話せるところからお話しください。
不安に向き合う練習なので、楽ではない面もあります。ただし、いきなり難しい課題から始めるのではなく、取り組みやすい段階から少しずつ進めます。不安は行為をしなくても時間とともに下がっていくことを、体験しながら確かめていきます。
薬で症状がやわらぐ方もいますが、認知行動療法と組み合わせることで、より効果が期待できるとされています。症状やご希望に合わせて、治療の組み合わせを一緒に考えます。
確認に応じ続けると、強迫が長引くことがあります。とはいえ、急に断ると本人の不安が強くなることもあるため、どのように応じていくかは、治療の中で本人と一緒に話し合って決めるのがおすすめです。ご家族だけでのご相談も承ります。
経過は人によって異なり、時間をかけて少しずつ良くなっていくことが多い病気です。治療を続けながら、強迫にとられる時間や苦痛を減らし、やりたいことに使える時間を取り戻していくことをめざします。
多くの方が、仕事や学校を続けながら通院されています。強迫のために仕事に大きな差しさわりが出ている場合は、業務の調整や休養が必要かどうかも一緒に考えます。
あかつきメンタルクリニックでの診療
当院は、名古屋市中区丸の内(地下鉄「丸の内」駅から徒歩4分、「伏見」駅から徒歩7分)にある精神科・心療内科のクリニックです。診療時間は平日 10:00〜18:00、土日祝 9:00〜17:00(どちらもお昼休みあり)です。診療日は Web予約の空き状況でご確認ください。
- 初めての方は、Web予約・公式LINE・お電話(050-3529-9731)でご予約ください。
- 初診では、いまお困りのこと、これまでの経過、生活や体の状態などを伺い、今後の進め方を一緒に考えます。
- 16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています。15歳以下の方の診療は行っていません。
- 入院や専門的な治療が望ましいと考えられる場合は、適した医療機関をご紹介します。
受診の前に、受診にあたって(持ち物・当院で診療をお受けできない場合)をご確認ください。
参考にした資料
- 米国精神医学会『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』
- 世界保健機関 ICD-11(国際疾病分類 第11版)
- 厚生労働省「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」
- 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」(強迫性障害)
このページは、こころの病気についての一般的な情報です。診断や治療の方針は、診察でお話を伺ったうえで一人ひとりに合わせて決めます。気になる症状があるときは、自己判断せずにご相談ください。