月経の前になると、自分でも抑えられないほどイライラする、急に涙が出る、何もかも嫌になる。でも月経が始まると、うそのように楽になる——。そのくり返しで仕事や人間関係がつらくなっているなら、PMS(月経前症候群)や、こころの症状が強く出るPMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。周期に合わせた対策や治療があります。
こんなサインはありませんか
- 月経の1週間ほど前から、イライラや怒りっぽさが強くなる
- 月経前になると、急に悲しくなったり涙もろくなったりする
- 月経前は、気分の落ち込みや不安・緊張が強くなる
- 月経が始まると、数日のうちに気分が楽になる
- 月経前は、家族や同僚とのぶつかりが増える
- 月経前は、眠気・食欲の増加・むくみ・胸の張りなども気になる
当てはまる数で診断が決まるわけではありません。つらさが続いて、暮らしや仕事に差しさわりが出ているときは、早めにご相談ください。
PMS・PMDDとは
PMS(月経前症候群)は、月経の前(3〜10日前ごろ)に心や体の不調が現れ、月経が始まるとともに軽くなったり消えたりする状態です。腹部の張り、胸の張り、頭痛、むくみ、眠気などの体の症状と、イライラ、落ち込みなどのこころの症状がみられます。
PMDD(月経前不快気分障害)は、PMS のうち、特にこころの症状が強く、仕事や家庭生活、人間関係に大きな支障が出るものです。国際的な診断基準(DSM-5-TR)では、抑うつ症のなかまとして位置づけられています。
「月経前はだれでも多少は不安定になるもの」と我慢している方も少なくありませんが、生活に支障が出るほどの症状は、治療の対象になります。
主な症状
こころの症状
- 気分が急に変わる、急に悲しくなる、涙もろくなる
- 強いイライラ、怒りっぽさ、人とのぶつかりが増える
- 気分の落ち込み、絶望感、自分を責める気持ち
- 不安や緊張、気持ちが張りつめた感じ
- 興味がわかない、集中できない、疲れやすい
- 自分をコントロールできない感じ
からだの症状
- 胸の張りや痛み、むくみ、体重が増えた感じ
- 頭痛、関節や筋肉の痛み
- 眠気、または眠れない
- 食欲が増える、特定の食べ物が無性に欲しくなる
原因・なりやすさ
はっきりした原因はまだわかっていませんが、排卵後に起こる女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の変動に対して、脳の働き(セロトニンなど)が敏感に反応することが関係していると考えられています。ホルモンの量そのものの異常ではなく、「変化への感じやすさ」が人によって異なると考えられています。
ストレスや睡眠不足、生活リズムの乱れが重なると、症状が強くなりやすいこともあります。
診断と「記録」の大切さ
PMS・PMDD の診断で最も大切なのは、症状が月経の周期と結びついているかを確かめることです。そのため、少なくとも2周期ほど、毎日の気分や体の症状を記録していただくことをおすすめしています。
- 毎日の気分(イライラ・落ち込み・不安など)を、点数やひとことでメモする
- 月経の始まった日と終わった日を書く
- 眠り・食欲・体の症状もあわせて記録する
スマートフォンの月経管理アプリのメモ機能などを使うと続けやすくなります。月経前に限らず一か月中つらい場合は、うつ病や不安症など、別の病気が隠れていることもあります。月経前に悪化するタイプのうつ病もあるため、記録をもとに丁寧に見分けていきます。
治療について
症状の強さや、生活への影響、ご希望に合わせて、次のような方法を組み合わせます。
生活の工夫
- 規則正しい睡眠と、適度な運動(ウォーキングなど)
- 月経前は予定を詰め込みすぎない。大事な話し合いは避けるなど、周期に合わせて計画する
- カフェインやアルコール、塩分のとりすぎに気をつける
薬物療法
こころの症状が強い PMDD では、抗うつ薬の一種である SSRI が有効とされています。毎日飲む方法のほか、症状の出る時期(排卵後〜月経前)にだけ飲む方法がとられることもあります。
婦人科との連携
排卵を抑える低用量ピルなどのホルモン療法や、漢方薬による治療は、婦人科で検討されることが多い治療です。体の症状が強い方や、ホルモン療法を希望される方には、婦人科の受診をおすすめし、必要に応じて連携しながら治療を進めます。
仕事や暮らしの中での工夫
症状の出る時期がある程度予測できることは、PMS・PMDD の対策を立てやすい点でもあります。記録をもとに、つらくなりやすい時期を見越して準備しておきましょう。
- 予定を調整する:大事な会議・試験・大きな決断は、できれば症状の軽い時期に入れます。
- 「いつもの自分ではない時期」と知っておく:月経前に強い怒りや落ち込みが出ても、「今はそういう時期」と気づけるだけで、少し気持ちに余裕が生まれることがあります。
- 休む時間を確保する:つらい時期は、家事の手を抜く、早めに寝るなど、意識してペースを落としましょう。
- 気持ちを書き出す:言いたいことはその場で伝えずに、いったん書き出してから、落ち着いた時期に見直すのもひとつの方法です。
こうした工夫をしても生活への支障が大きいときは、治療を組み合わせることで楽になることがあります。我慢を続けず、ご相談ください。
周りの方へ
- 「気のせい」にしない:月経前の気分の変化は、本人の意志だけでコントロールできるものではありません。
- 周期を一緒に知っておく:つらくなりやすい時期を共有しておくと、家事の分担や予定の組み方を調整しやすくなります。
- 落ち着いているときに話す:ぶつかったことについては、症状の落ち着いた時期に、責めずに話し合うと伝わりやすくなります。
よくあるご質問
はい、ご相談ください。特にイライラや落ち込みなど、こころの症状が強く生活に支障が出ている場合は、精神科・心療内科での治療が役立つことがあります。体の症状が中心の場合は、婦人科の受診もあわせておすすめします。
どちらも月経前に症状が出て、月経が始まると軽くなる点は同じです。PMDD は、そのうち特にこころの症状(気分の変動・イライラ・落ち込み・不安など)が強く、仕事や人間関係に大きな支障が出ているものを指します。
できれば、月経の始まった日と、毎日の気分や体の症状を記録してお持ちください。記録がなくても受診はできます。診察のあとで記録をつけ始めていただくこともあります。
症状や薬の種類によって、毎日飲む方法と、症状の出る時期だけ飲む方法があります。生活のリズムや症状の出方を伺って、一緒に決めていきます。
薬の使い方を考えるうえで大切な情報ですので、妊娠を考えている段階で早めにお伝えください。必要に応じて、婦人科とも連携して治療を考えます。
あかつきメンタルクリニックでの診療
当院は、名古屋市中区丸の内(地下鉄「丸の内」駅から徒歩4分、「伏見」駅から徒歩7分)にある精神科・心療内科のクリニックです。診療時間は平日 10:00〜18:00、土日祝 9:00〜17:00(どちらもお昼休みあり)です。診療日は Web予約の空き状況でご確認ください。
- 初めての方は、Web予約・公式LINE・お電話(050-3529-9731)でご予約ください。
- 初診では、いまお困りのこと、これまでの経過、生活や体の状態などを伺い、今後の進め方を一緒に考えます。
- 16〜18歳の方は保護者の方の同伴をお願いしています。15歳以下の方の診療は行っていません。
- 入院や専門的な治療が望ましいと考えられる場合は、適した医療機関をご紹介します。
受診の前に、受診にあたって(持ち物・当院で診療をお受けできない場合)をご確認ください。
参考にした資料
- 米国精神医学会『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編』
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(女性の健康)
このページは、こころの病気についての一般的な情報です。診断や治療の方針は、診察でお話を伺ったうえで一人ひとりに合わせて決めます。気になる症状があるときは、自己判断せずにご相談ください。